藝儂人マガジンあとがき 「六次産業化と六十次産業化」

藝儂人マガジンより、許可を得て転載させてもらっています。m(_ _)m

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           ●●● あとがき ●●●

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  「六次産業化と六十次産業化」


  こんにちは。黒子儂人の清水です。


  「六次産業」という言葉は、私たち農業・食品関係者の間では

  すでに聞き慣れていて何の違和感もありませんが、一般的にはまだよく

  知られていないようです。

  少し小難しい話になってしまいますが、「六次産業化」は、地域

  ビジネスの展開、食農をめぐる新たな業態の創出などを狙って、

  農林水産省が推進している取り組みのひとつとなります。

  ウィキぺディアによると・・・

  「農業、水産業は、産業分類では第一次産業に分類され、農畜産物

   水産物の生産を行うものとされている。だが、6次産業は、農畜産物

   水産物の生産だけでなく、食品加工(第二次産業)、流通、販売

   (第三次産業)にも農業者が主体的かつ総合的に関わることによって、

   加工賃や流通マージンなどの今まで第二次・第三次産業の事業者が

   得ていた付加価値を、農業者自身が得ることによって農業を活性化

   させようというものである。」

  とあります。

  何だかわかるようでわかりにくい説明ですが、要するに、

  昔と違い、一次産業(農林水産業)だけでは家族を支えていくことが

  非常に難しい時代になったので、自分で農畜産物を加工し(二次産業)、

  付加価値を上げつつ、その売り方(三次産業)にまでしっかり気を配り、

  「儲かる一次産業者」になりましょうね!

  ということだと、私は認識しています。


  これを式にすると、

   1次産業 × 2次産業 × 3次産業

  となり、数字の部分をすべて掛け合わせて

  「6次産業化

  というわけです。


  「作ったらお役目ご免」の過去の農業のやり方(しくみ)とはおさらばし、

  自身の「作品」が消費者の口の中に入る直前まで、しっかりと責任を

  持って見届ける新しい農業のスタイルを創り上げましょう、というのが

  「六次産業化」の本来の主旨だと思っています。

  ところが、実際の六次産業化の現状はいかがでしょうか。

  抱えている悩みや、やりたいことなどの実情は、農業者(生産者全般では

  わかりにくくなるので、あえて農業者に絞ります)毎にそれぞれ違います。

  決して、六次産業化だけが農業活性化のための魔法ではないということ

  です。

  現実的なところに目を向けてみますと、昨今の「六次産業化ブーム」

  (あえてブームと呼ばせていただきます)は、新商品開発ばかりが注目され、

  新しいモノが出来上がった段階でプロジェクトそのものが終了している

  ケースが非常に多いと感じます。

  売れ線の加工品を作り、ちょっとイメージのいいデザインのパッケージを

  作ってそれらしい場所で販売する、この繰り返しが今の私たちの周りに

  溢れている大多数の商品や売り場の現状ではないでしょうか。

  たしかに、こうした加工品が売れることで、原材料だけを販売した時の

  何倍もの収入が生まれるかもしれませんが、その商品開発にかけた

  労力や時間などをすべてペイできる(上回る)ほどの売上が立つヒット

  商品というものは、そう簡単に作れるものではありません。

  皆さんも「どこかで見たことのある似たような商品だな」と感じたことは

  いくらでもあるはずです。

  ただでさえ競争が激化している新商品開発合戦の中、飽きの早い消費者が

  いつまでも同じ商品に「お布施」してくれるはずがありません。

  消費者に飽きられたら次の商品開発へ!?

  いつの間にか、農業を魅力ある生業にすることではなく、次から次へと

  新しい商品を世に生み出させることが目的になってしまっては

  いないでしょうか。

  これでは、農業者から、自分たちが他の業者にとっての「出汁」にしか

  使われていない、と指摘されても仕方ないと思います。

  こんな形が本来の「六次産業化」の姿ではないはずです。


  では一体何が足りないのでしょうか?


  そのヒントは、手前味噌になっていまいますが、私は「百儂人」の中に

  あると思っています。

  「百儂人」という言葉の中に2つも存在する、根本思想である「人」。

  そう、この「人」こそが、今の六次産業化の施策に決定的に足りない

  のです。


  当たり前ですが、農畜産物は「人」がつくるものです。

  そして、それを食べるのも「人」。

  食べ物の旅は「人」から始まり「人」で終わると誰もが知っていながら、

  どうしてその「人」をいともたやすく忘れてしまうのでしょうか。

  よく、ビジネス成功のカギは「ヒト」、「モノ」、「カネ」を大切にする

  ことだと言われますが、最初の「ヒト」をないがしろにして、いかなる

  事業も成功など決して有り得ません。

  百儂人サポーターのトマ兄さん(通称)が以前ブログで、ご自身のことを

  「消費者」ではなく「お買いモナー」という表現を使われていました。

  「お買いモノする人」だから「お買いモナー」。

  従来の「消費」という考えではなく、気に入った農業者の商品を

  「買い支える」ことで、ひいては農業そのものを支え、結果的に

  「生産」そのものに貢献する、という考え方です。

  「消費者」と聞くと、どうしても「消費」するだけの存在のように

  思われてしまいますが、そうではなく、実は「生産者」でもあるという、

  深いお話です。

  さらに、檸檬儂人・河合さんの言葉をお借りすると、「生産者も自身の

  作物以外はすべて買わないといけないのでお買いモナーの一人」なの

  です。

  農業は「人を支え」、そして「人に支えられている」のです。

  この事実を私たちはもっと強く意識した方がよいのではないでしょうか。


  先ほどの式をもう一度持ってきますね。

   1次産業 × 2次産業 × 3次産業


   これに、さらに「人」を掛け合わすことで、「六次産業化」が

   より本来の姿に近づくのではないかと考え、


   「ひと」つまり、「10」をかけて、

   1×2×3×10 = 60


  「六十次産業化」


  と、何だか少し偉そうな言い方になってしまいましたが、私がこれを

  言う前から、百儂人はすでに手段のひとつとして「六十次産業化」を

  実践しています。

  もっとも、儂人さんの多くは、百儂人に入る前からすでに実践されて

  いる方々ばかりですが。

  ですから、別段新しい考え方でも何でもありません。


  何度も言いますが、重要なのは、本質が「人」であるということです。

  「モノ」や「カネ」しか感じられないような取り組みや施策に明日は

  絶対ありません。


  こんなことを考えながら、またいつものようにキッチンカーに乗って、

  皆さんに「一度は絶対食べてほしい儂人さんの作品」を持ってお近くの

  イベント会場へ向かわせていただきますので、どうかよろしく

  お願いします~☆


  今号も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

  次回は8月12日(金)発行予定です。よろしくお願いします。


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